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虹色ペリカンが、ダマスカスに出現。
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過日、村上春樹のエルサレム賞での受賞スピーチをニュースで聞きました。

エルサレム賞というのは、イスラエル最高の文学賞で、
自由についてや、政治、思想について扱った作品の評価をしているのだとか。

まさにイスラエル軍によるガザ地区侵攻があった昨日の今日というこの時期だから、
村上春樹にも、受賞の辞退や、授賞式の欠席を求める声が少なくなかったそうです。

そんな状況で授賞式の会場に立った村上春樹は
「自分自身のため、見ないのではなく見ることを、
沈黙ではなく語ることを選んだ」 と話します。

彼は言葉を続け、
人が「卵」なら、卵の前に聳え、阻み、卵が叩きつけられ、
卵を潰してしまう「壁」の存在 について語っていました。

例え「壁」がどんなに正しく、「卵」が間違っていたとしても、
自分は、必ず「卵」の側に立つ。

という話で、
「壁」は体制で、人の生命や自由が「卵」で、
賞の主催国であるイスラエルの軍事行動のことも又「壁」に例えて批判をしていたんだと思います。

受賞を待ってイスラエルの偉い人だかに囲まれて座る、見慣れない村上春樹は
ちょっと内股で、姿勢もあまりよくなくて、別に格好よくないし、
英語の発音も全然格好よくない(筑紫さんみたいな英語)。
でも、話している村上春樹は、
私が今まで見たスピーチをする人の姿で一番カッコよかった。


こういう言葉が
破壊や攻撃ではなく、実りをもたらすのだろうなあと感動しました。

人間の志 というものは、こうして語られるべきなんだろう。

政治家や役者は、
上手に人を煽ったり、押したり引いたり、笑わせたり、
耳に心地の良い喋り方をするけれど、
なかなか本当のことを言ってくれないでしょう?

誰かが本当に信念を以って話すことというのは、
どんなに訥訥としていようと、
聞く人が事情に疎かろうと、伝わるのじゃないだろうか。

このスピーチに私が感動したのは、
レトリックにではなくて、勿論弁舌の爽やかさでもなくて、
一生懸命に訴える村上春樹の姿です。
ニュースの冒頭から見ずに、それが村上春樹だと分からなかったとしても、
多分私は感動したと思うのです。


私も、個人的な大して特別な思想というわけではなく
多くの人が一般的に思うように戦争が厭な一人です。

クリントン時代だと思うのですが(違うかも)、
アメリカとイギリスが合同で「砂漠の狐作戦」という作戦を立て、
突然中東で戦争をおっぱじめた
というニュースの記憶が私の中に鮮明に残っています。

私は、中学か高校の頃で、ある日母とニュースを見ていたら、
突然戦争が始まった。
と、私の目にはそう見えたのです。

何故なのか当時の自分でもさっぱり分からなかったのですが、
何故か、そのニュースに異様な衝撃を受け、
私はうろたえ、混乱し、必死で我慢した末に、堪えきれずに
母に「アメリカなんて大嫌いと」言って、結局わんわん泣いたのです。
人前で、しかも親の前で泣いたことが恥ずかしくて、
作戦名ごと未だにニュースを覚えています。

ニュースの背後関係も分からず私が泣いているのを見た母は、驚いただろうと思います。
ちょっと苦笑いで
「あなたがこれから戦争のない世界にすればいいのよ」
というようなことを言いました。

私は、とりたてて大きな志を持っていない中学生なり、高校生だったので、
ンな無茶な。
と思ったのだろうと思います。

一人じゃ無理。
政治家になる気もない。
傷ついたからと言って、それを跳ね返す勇気も根性もない。

無理。無茶。無謀。不可能。

ああ、でも、
村上春樹は、一人で、政治家でもなく、それをやっている。
人に恥じるような涙のようなもので訴えるのではなく、
堂々と、人に胸を張れるやり方でやっている。

あれは言葉の力だ。
想像力の力だ。
思考の力だ。
人を奮い立たせるけれども、人を傷つけない。

ファンではないけど、
フィッツジェラルドが好きだとかって、受け付けないけど、
内股だけど、猫背だけど、
でも、村上春樹、かっけー!!!


ところで、青春の書は、と問われれば、
すぐにタイトルを思い浮かべる事の出来る本が、私には二冊あります。

宮本輝の『星々の悲しみ』と、
村上春樹の『ノルウェイの森』がその二冊です。

それでも、ファンじゃないの。
人生最高 ではなく、 青春の というところがちょっとミソ。
 

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